千望台にも雪が無くなり、春を感じられる日々が続く4月。
留萌市在住の山田理恵さん(33歳)から夫 翔平さん(35歳)の家出人・失踪人調査を依頼される。
理恵さんは看護師、翔平さんは団体職員として働かれている。
翔平さんが半年ほど前から職場の人間関係で悩み、心療内科に通院していた。
仕事も休職していた。
金曜日、理恵さんは当直勤務だった。
翌日の土曜日、理恵さんが自宅に戻るとテーブルの上に手紙が置いてあった。
手紙は翔平さんが書いたもの、「今まで迷惑をかけてすまなかった」、「感謝しています」、「これ以上、迷惑をかけられない」と書かれていた。
翔平さんの所持金は不明、自分用のクルマに乗って出ていった。
理恵さんは身内や友人などにも協力してもらい、留萌市内、滝川などを探し回った。
だが、翔平さんも翔平さんのクルマも見つからない。
翌週の水曜日、理恵さんは翔平さんの家出・失踪調査を当社へ依頼された。
さっそく探偵が調査を開始する。
留萌市内はこれまで通り、身内の方、友人などに引き続き捜索してもらう。
探偵は2班に分かれ、A班は稚内方面、旭川市内を捜索する。
B班は札幌市内を徹底的な捜索することになった。
翔平さんは札幌の大学を卒業しており、その時は札幌で独り暮らしをしていた。
当然、札幌の土地勘はあるはず。
調査を開始して12日目、B班が翔平さんのクルマを札幌市西区のゲームセンターの駐車場で確認をする。
車内で翔平さんが仮眠している状況を確認する。
時間は深夜1時だったが、理恵さんに連絡をする。
探偵は理恵さんに札幌まで来ていただくことをお願いした。
理恵さんが来られるまで探偵は慎重に翔平さんを見張り続ける。
午前5時、理恵さんが同ゲームセンター駐車場に到着する。
翔平さんに気付かれぬよう静かに翔平さんのクルマを探偵車両3台で囲む。
理恵さんと翔平さんの母親が翔平さんのクルマにむかい、小さく声をかける。
翔平さんは慌てながら、クルマから降りてくる。
そして泣き崩れるように膝をついて座り込んでしまった。
理恵さんは翔平さんの手を握りながら、優しく肩をさすっていた。
その日、翔平さんは理恵さん、母親と留萌へと帰っていった。
二日後、理恵さんより探偵に連絡をいただく。
翔平さんの心も落ち着き、今しばらくは休職を続け、心の治療をしていくとのことだった。