金森赤レンガ倉庫にも観光客が賑わう6月。
函館市在住の山田仁美さん(41歳)から夫 康広さん(43歳)の調査を依頼される。
康広さんの仕事はクルマディーラーの営業職。
山田さん家族は長女 奈央さん(17歳)との3人家族。
康広さんは2ヵ月ほど前から帰宅時間が遅くなり、休日も仕事だからと外出をする。
また、帰宅しても食事をして、入浴をするとすぐに自室にこもってしまう。
そんな康広さんを見て、仁美は「もしや浮気と当社へ依頼をされた。
さっそく探偵が調査を開始する。
康広さんの勤務先からの退勤状況を確認する。
午後7時30分 康広さんが職場よりクルマに乗って出てくる。
クルマは昭和タウンの施設屋上駐車場に入場する。
屋上駐車場の隅にクルマを止める。
探偵は浮気相手と合流をするのではないか?と慎重に監視を続けていた。
午後9時40分、康広さんのクルマが動き出し、帰宅する。
誰かと接触することはなかった。
翌日も康広さんは同じパターンの行動であった。
火曜日、会社は休みだが康広さんはお客さんと商談があると言って外出をする。
探偵は自宅から康広さんのクルマを追った。
クルマは立待岬の駐車場に停まった。
そこで5時間、康広さんは動かない。
午後6時、康広さんのクルマは動き出し、いつものように昭和タウン屋上駐車場に行く。
午後9時、昭和タウンの駐車場より動き出し、帰宅する。
探偵が調査を始めて一週間、康広さんが女性と会うなどの行動はまったくない。
たんに家に帰りたくない、家にいたくない・・・と思われる行動であった。
探偵は仁美さんに康広さんとの関係をうかがったのだが、2ヵ月前までは本当に仲の良い夫婦だったそうです。
さらに探偵は仁美さんにお願いして、康広さんのクルマの車内に調査器材を設置してもらった。
その器材で康広さんの車内の音声が聞こえるようになる。
その後、いつものように職場から出てきた康広さんのクルマを尾行する。
やはり昭和タウンの屋上駐車場の隅にクルマを止める。
探偵は康広さんの付近に調査車両を止め、康広さんの車内音声を聞く。
カーナビはテレビになっており、その音声が聞こえる。
何度か康広さんため息が聞こえてくる。
そして、康広さんの声で「もう俺、ダメだな」と独り言が聞こえてきた。
そして午後9時30分、康広さんは帰宅する。
翌日、仁美さんに昨日の車内での状況を報告させていただく。
仁美さんは何度か夕食に招いたことのある康広さんの後輩社員の佐々木さんに連絡を取ってみた。
佐々木さんから話を聞いた仁美さんは驚き、涙が出てきた。
康広さんの会社では社員の希望退職を募っており、康広さんにも声がかかった。
だが、康広さんは長女 奈央さんが来年、大学に進学のため、希望退職を受け入れる選択はできなかった。
康広さんは上司にハッキリと「私は希望退職をしません」と言ったそうです。
そうすると翌日からその上司から康広さんへのパワハラや嫌がらせなどが始まった。
過大な販売目標を押し付け、達成しなければまるで人格を否定するような言葉を日々、ぶつけられていたそうです。
その話を聞いた仁美さんは、思わず泣き崩れてしまった。
仁美さんはその上司にも怒りがわいたが、康広さんに対しても怒りがこみ上げてきた。
「そんな時だからこそ、一人で抱え込まず、家族で助けあうことでしょう」・・・・と。
仁美さんは康広さんにLINEをして「今日は話があるから早く帰ってきて」と連絡をする。
午後8時、康広さんは会社からまっすぐに帰宅する。
仁美さんは康広さんに「すべてを知っている」と告げた。
康広さんはうつむきながら、「すまない」と言ったそうです。
仁美さんは「アナタが謝る話ではありません」「なぜ状況を言ってくれなかったの」と言ったそうです。
康広さんは仁美さんに心配をかけたくない、でも家に帰って自分の落ち込んだ姿を見せたくないと、毎日寄り道をしてきたそうです。
その後、康広さんは労働基準監督署に相談をして、会社と和解をしたうえで退職をされた。
幸い、得意先の会社から誘われ、再就職も決まったそうです。