残暑の日差しが厳しい9月。
江別市在住の田中美沙さん(39歳)から依頼を受ける。
内容は5日前に家出をした夫 幸太郎さん(42歳)の捜索であった。
幸太郎さんは小学校で教頭職として働いている。
若くして教頭になった幸太郎さんは悩みも多かった。
校長、教育委員会からの指示、一般教員からの要望、生徒の父兄からの苦情、生徒間のいじめ問題 等など。
1ヶ月ほど前、幸太郎さんが美沙さんにポツリ言った。
「仕事辞めてもいいかな?」と。
美沙さんが「エッ、どうしたの」と返答すると、幸太郎さんは「いや何でもないよ」と会話が終わった。
美沙さんは探偵に「その時、すでに夫は限界にきていたのだと思います」と辛そうに言われていた。
そして5日前、自宅のノートパソコンの間に手紙を置き、失踪してしまった。
手紙には「美沙へ、突然このような行動をおこす僕を許してほしい」「僕の心は限界です」「探さないでください」と書かれていた。
探偵がさっそく調査を開始する。
まずは失踪日の状況を確認する。
教頭の幸太郎さんは学校の玄関を閉め、いつも最後に帰るのだが、その日は主幹教員の鈴木さんにカギ閉めを頼み、
午後6時には学校を出たのが分かった。
おそらく学校の鍵を自分が持っていては、迷惑がかかると思っての行動だと思われる。
幸い、幸太郎さんは車で通勤をしていたため、車に乗っての失踪であった。
捜索の方向性は、まずは幸太郎さんの車両を探す、見つけた場合は、その車の完全監視をおこなうことにした。
捜索は2班に分かれた。
A班は札幌、および道南方面。
B班は岩見沢、および道東方面。
探偵が捜索を着手したから8日目。
B班が音更町の道の駅で幸太郎さんの車両を発見した。
探偵がそっと幸太郎さんの車両に近づく。
車のシートを倒して寝ている人影を確認、おそらく幸太郎さんと思われた。
すぐに探偵が美沙さんに連絡をする。
時間は午後9時であった。
美沙さんは、すぐに音更町に向かってくれることになった。
美沙さんは兄に車を運転してもらい、深夜1時に帯広に到着する。
探偵の2台の車両が幸太郎さんの車の進路に停車、万が一にも幸太郎さんが逃亡できないような体制をとる。
そして美沙さんが静かに幸太郎さんの車両に近づく。
運転席の窓を小さくたたく美沙さんだった。
2分後、幸太郎さんが車から降りてきた。
幸太郎さんの顔は疲れ切っていた。
美沙さんもそれを感じ取ったようだった。
美沙さんは「帰ろうね」と幸太郎さんの手を握りながら言われていた。
幸太郎さんは、美沙さんと江別へと帰っていった。
後日、美沙さんから連絡をいただく。
幸太郎さんは、当面は休職をすることになったそうです。
