時計台にも初夏の風が吹く6月
札幌市在住の吉田千里さん(33歳)から婚約者 岸田高志さん(32歳)の調査を依頼される。
高志さんは派遣会社に登録し、今は自動車販売会社で働いている。
千里さんと高志さんは友人の紹介で知り合い、交際して2年になる。
先日、高志さんからプロポーズされ、千里さんの両親からも了解を得て、結婚を進めている。
コロナのため、結婚式はおこなわず、千里さんの誕生日の8月8日に入籍をおこない、
8月から新居で暮らすことにした。
千里さんも高志さんも実家暮らしのため、新居探しや家電の購入など、
二人は休みを合わせては結婚の準備をしていた。
新居を借りるための費用や家電の購入費用などは高志さんの貯金でまかなった。
一通りの準備が終わり、後は8月の入籍に向けて過ごしていた。
だが、5月に入ってから高志さんの様子が変わった。
高志さんは休みの日も忙しいと言って会えないと言われる。
デートで食事に行っても、午後9時になると用事があると言って早々に帰っていく。
そのような状況が1か月ほど続いていた。
また、高志さんはいつも疲れているようだった。
千里さんはとても不安になった。
「もしや高志さんの心変わりがあって、結婚に迷っているのではないか?」と。
その不安は日増しに強くなっていった。
千里さんは悩み、迷った末に当社へ依頼をされた。
調査内容としては、高志さんが結婚に迷いを持っているのか?
もしかしたら、誰か私以外の交際相手がいるのか?
探偵はさっそく調査を開始する。
結果はすぐに判明した。
高志さんは、派遣先の仕事が終わった後、デリバリーサービスのアルバイトをしていたのだった。
また、休みの日はハローワークに行き、仕事を探していた。
別な休みの日は採用面接に行っていた。
当然ながら、女性関係などはなかった。
調査結果を千里さんに報告させていただく。
翌日、千里さんは高志さんと話し合いをした。
千里さんは高志さんに率直に話をした。
不安がつのり、探偵に調査を依頼した、そして高志さんがデリバリーのアルバイトや
ハローワークに行っていることなどを知ったことなど。
高志さんは照れくさそうに話してくれた。
新居を借りる費用や電化製品を買う費用などは貯金でまにあった。
だが、肝心の結婚指輪を買うお金が足りない。
親から借りることも考えたが、結婚スタートから借金は嫌だった。
そこで仕事が終わってからデリバリーのアルバイトをして、指輪の購入費用を用意しようとしていた。
また、結婚するにあたって、やはり派遣ではなく、正社員で働ける職場を探していたとも言っていた。
千里さんはとても嬉しかったが、少し高志さんに不満をぶつけた。
全ての費用を自分で捻出しようとした高志さんを誇らしく思ったが、
同時に自分に相談せずに無理をしていたことに少しだけ怒りがわいた。
でも、ほんの少しの怒りと同時にたくさんの涙があふれてきたそうだ。
高志さんはデリバリーのアルバイトを辞め、千里さんもお金を出して、素敵な結婚指輪を購入する。
また、高志さんは医療機器メーカーに正社員として採用された。
8月8日、 二人は入籍をされた。