テレビ塔からの眺めも春を感じられる5月。
札幌市在住の吉田孝さん(42歳)から婚約者 高木純子さん(33歳)の調査を依頼された。
孝さんは公務員、純子さんは事務職。
孝さんは独身で、あまり女性と交際したこともなかったが、友人の勧めでマッチングアプリに登録をしてみた。
1ヵ月後、孝さんは純子さんと知り合い、交際に発展した。
純子さんは旭川市に在住しているため、孝さんは月に1回、旭川に行き、純子さんとデートをしていた。
デートは午前中に旭川駅付近で待ち合わせ、食事をして映画を見たり、買い物をしたりする。
夕方の列車で孝さんは札幌へ帰る。
そんな交際が1年ほど続いた。
純子さんは孝さんに「私は今年中には仕事を辞め、札幌に移って結婚したいわ」と言っていた。
孝さんも「早く結婚をしたいね」と純子さんに答えていた。
当初から純子さんにお金を貸していた孝さん。
純子さんのお母さんが大きな手術をするため、お金が必要だからと100万円を貸す。
純子さんが仕事帰りに車をぶつけてしまい、修理代に60万円を貸す。
純子さんの過失でお風呂の水道を閉め忘れ、マンションの部屋を水浸しにしてしまい、補修費用として150万円を貸す。
純子さんの妹が悪い男に騙され、借金を背負わされたため、そのお金を立て替えるのに120万円を貸す。
純子さんがどうしても結婚式をあげたい式場の予約金として80万円を用意する。
ニューカレドニアへの新婚旅行の費用として70万円を純子さんに渡す。
来年に完成するマンションの頭金として200万円を純子さんに渡す。
その他も含めると孝さんは純子さんに1000万円以上のお金を渡していた。
だが、5月初旬から純子さんに連絡がつかなくなった。
LINEを送っても、既読されないどころか、そもそも送れなくなったいる。
電話をかけても「現在、使われていません」というアナウンスが流れる。
孝さんは何度かタクシーで純子さんのマンションの前までは送っていったことがあったが、部屋は分からない。
会社の名前は聞いていたが、調べても、その名前の会社が見つからない。
そこで孝さんは純子さんに何かあったのではないかと探偵に依頼されたのだった。
ここで探偵は孝さんにお聞きした。
「純子さんに騙されているのではありませんか?」と。
孝さんは一瞬の迷いもなく、「彼女はそんな人ではありません」ときっぱりと答えられた。
さっそく探偵が調査を開始する。
3週間後、すべての調査が判明した。
純子さんの言っていることはすべて嘘だった。
いや、純子さんではなく、彼女は吉田涼子さんだった。
そもそも名前が嘘、年齢も33歳ではなく、孝さんと同じ42歳。
涼子さんのお母さんは手術などしていなく、元気だった。
涼子さんは車をぶつけてなどおらず、そもそも免許がない。
水道を閉め忘れ、マンションの部屋が水浸しにはなってはいなく、そもそも一軒家に住んでいる。
涼子さんには妹などいなく、兄がいるだけ。
その他のことも全部、嘘。
そして涼子さんは既婚者であった。
大学生の息子と高校生の娘がいる。
夫は長距離ドライバー。
また、涼子さんは孝さんの他にも同じようにマッチングアプリで知り合い、交際している男性が複数人いた。
探偵はすべてを孝さんに報告させていただいた。
孝さんはあまりの事実に呆然とされた。
孝さんは探偵に「あまりの事実に僕の頭は思考停止になっています」「ゆっくりと考えます」と言われた。
1週間後、孝さんから探偵に連絡が来た。
やはり、自分が騙されたことも辛いが、これ以上の被害者を出したくないと警察へ被害届を出すこと、
弁護士を立て、騙されたお金の返済請求をすることを決めましたと言われた。