時計台にも雪が降り積もる1月。
札幌市在住の玉田由美子さん(53歳)から夫 俊一郎さん(54歳)の調査を依頼される。
依頼内容は俊一郎さんの浮気調査であった。
俊一郎さんの職業は国会議員。
俊一郎さんは既存の政治家と違い、是々非々で発言することで若者からも人気の政治家である。
俊一郎さんは東京の議員宿舎が生活拠点になっている。
由美子さんも東京の議員宿舎で俊一郎さんの身の回りの世話をしながら、札幌へ戻っては俊一郎さんの代わりに地元の有権者などとの交流をしていた。
だが、由美子さんには一つ懸念されることがあった。
俊一郎さんの女性問題であった。
俊一郎さんは国会議員になる前は国家公務員をしていた。
由美子さんはその職場で俊一郎さんと知り合い、結婚をされた。
俊一郎さんは、当時から仕事ができる人だったが、女性問題は絶えず抱えていたそうだ。
国会議員になってからは、少し落ち着いたが、2期目の当選後からは、頻繁に女性関係が噂されるようになった。
今年は選挙もあるため、由美子さんは、現状の俊一郎さんの素行調査をしておき、問題があるようなら対策をしたいと考え、
当社へ依頼をされた。
さっそく探偵は調査を開始する。
2チーム体制を構築する。
A班は地元札幌での俊一郎さんの調査。
B班は東京、その他地域での俊一郎さんの行動把握をおこなう。
さいわい、妻 由美子さんが事務所の管理をしているため、俊一郎さんの行動予定はある程度、把握できていた。
俊一郎さんの予定はさすがに国会議員で、とてもタイトなスケジュールだった。
午前中の飛行機で札幌に戻り、有権者の会合に出席、午後の便で東京に戻り、車移動で北関東を走り回る。
探偵も隙間なく行動を把握する。
やがて俊一郎さんに女性の影が見えてきた。
女性は札幌でタレントをしている大泉あけみさん(38歳)であった。
調査を開始して10日後、俊一郎さんが札幌へ戻ってくる。
由美子さんが把握している予定だと、明日の午前中の飛行機で札幌へ来るはずだった。
俊一郎さんは、札幌の老舗ホテルにチェックイン、15階で降りた。
探偵も急ぎ、同ホテルにチェックインをおこなう。
その後、大泉さんが俊一郎さんの部屋へ入っていくのを確認する。
探偵は引き続き、1階フロントで張り込みを続ける。
翌日、午前8時30分、俊一郎さんが部屋を出て、ホテルをチェックアウトする。
10分後、大泉さんがチェックアウトする。
さらに10日後、俊一郎さんは私服で議員宿舎を出てくる。
宿舎を出てきたとき、服装はラフなパーカーを着て、マスクと眼鏡をかけていた。
俊一郎さんは宿舎前でタクシーに乗車、そして銀座でタクシーを降り、マスクと眼鏡をはずし、カクテルバーに入っていく。
探偵も店内での内定調査のため、入店する。
俊一郎さんは、カウンターに座っていた女性の隣に座った。
俊一郎さんはドライマティーニをオーダー、ゆっくりとカクテルを飲みながら女性とじょう舌に会話をしている。
探偵は指向性のマイクを用い、俊一郎さんと大泉さんの会話を確認する。
雄一郎さん 「次の選挙に当選したら、離婚をするよ」
「妻は僕にとっては必要な人だけど、愛しているのは君なんだよ」
「僕は妻をもう女性としてみることはできないんだ」
「彼女にもう微塵の愛情もないんだ」
「君を待たせすぎたことにすまないと思っているよ」
大泉さん 「私はいつまでも待てるから、大丈夫だよ」
「俊ちゃんは、この国をよくすることだけを考えてね」
2時間後、二人は店を出て、俊一郎さんは右へ、大泉さんは左へと歩き出す。
俊一郎さんは、大泉さんに小さく手を振り、天を見上げながら歩いていた。
まるでドラマの一場面のようであった。
3日後、探偵は依頼人である由美子さんにすべての報告をさせていただく。
由美子さんは、おおよその想像はされていたが、バーでの二人の会話を聞いていた際は大粒の涙を流されていた。
翌日、由美子さんは東京へとむかい、俊一郎さんと会ったそうだ。
そして、1枚の離婚届けを俊一郎さんに渡された。
その後、正式に由美子さんは離婚された。
後日、探偵へ連絡をくれた由美子さんはかみしめるように言われた。
「浮気だったらよかったんです」
「彼は本気だったんです」・・・・・と。
半年後、解散総選挙があった。
残念ながら、玉田俊一郎さんは落選された。