クリスマスソングが街に流れ始める12月。
恵庭市在住の吉田由紀子さん(36歳)から夫 健太さん(38歳)の失踪人・家出人調査を依頼される。
健太さんは恵庭市にある飲料品工場で働いている。
12月10日、健太さんが仕事から戻らず、由紀子さんが心配していると、健太さんからメールが届く。
「探さないでください」、「苦労ばかり掛けてすまなかった」、「僕はもうこれ以上、がんばれない」と。
そのメールを最後に健太さんのスマホは電源を切った。
由紀子さんは、すぐに健太さんの友人、知人、職場の同僚などに連絡を取る。
そして、職場の同僚から話を聞くことができた。
健太さんは、転勤で恵庭に赴任してきた上司との折り合いが悪く悩んでいた。
同僚の人から見ても、理不尽なイジメだったそうだ。
そして一週間前、健太さんは、会社へ辞表をだした。
年内で退職となる予定であった。
由紀子さんは、そのような話はまったく知らなかった。
会社を辞めることより、上司からの理不尽なあつかいを受けていたことを
「なぜ、言ってくれなかったの」と強く思った。
健太さんは車に乗って失踪している。
そのため、由紀子さんを含め、家族、友人など手分けをして札幌、千歳、苫小牧、小樽 などを探された。
だが、手がかりもなく、時間だけが過ぎていく。
警察へも行方不明届を提出するが、警察は「自らの意思での失踪なので警察としては積極的な関与はしない」ときっぱりと言わる。
12月16日 由紀子さんはこれ以上は自分たちでは無理という決断をされ、当社へ依頼となった。
さっそく探偵が調査を開始する。
探偵は様々な状況を勘案し、2チーム編成で捜索をおこなうことにした。
Aチームは、恵庭に拠点を置き、札幌を含めて周辺の捜査を続ける。
Bチームは、道南方面へと捜索を広げた。
恵庭~千歳~苫小牧~室蘭~伊達~八雲~函館 へと捜索を続ける。
各町の道の駅、スーパーの駐車場、商業施設の駐車場 など等、くまなく探し続ける。
12月22日 Bチームの調査員が函館へと入り、捜索をする。
12月24日 函館の大型書店の駐車場で健太さんの車を発見する。
調査員一人は健太さんの車の後方に調査車両を止め、健太さんの戻りを待つ。
もう一人の調査員はすぐに依頼人の由紀子さんに連絡を取り、
健太さんが発見された場合、保護してもらうため、急ぎ函館へ向かってもらう手配をする。
さらに別の調査員が店内を捜索する。
健太さんは書店内の一階、窓側の席においてあるソファーに座り、うたたねをしている。
健太さんの顔は明らかに疲れ切っていた。
4時間後、由紀子さんが函館へ到着し、探偵と合流する。
幸い、まだ健太さんは店内で余す時間を過ごしていた。
時間は21:00、同店は22:00閉店。
おそらく健太さんはまもなく出てくると想定、健太さんが車に乗った瞬間に由紀子さんに保護してもらう体制をとる。
健太さんが強引に車を発進させてしまわないように健太さんの車を調査車両2台が囲い込む。
21:30 健太さんが店内から出てきて、車に向かって歩いていく。
本来であれば、健太さんが走って逃げないよう車に乗ってから由紀子さんが接触を取る想定でいたが、
店から出てきた健太さんを見て、由紀子さんが思わず駆け寄ってしまった。
だが、健太さんは逃げるようなことはせず、由紀子さんの顔を見た瞬間、膝から崩れ落ちた。
そして健太さんは何度も何度も由紀子さんに「すまなかった、すまなかった」と言っていた。
由紀子さんは言葉も出ず、ただただ泣かれていた。
二人は由紀子さんの乗ってきた車で恵庭へと戻っていった。
健太さんの車は探偵が恵庭まで届けることにした。
健太さんと由紀子さんの乗った車を見届けながら、探偵は空を見る。
クリスマスイブ、粉雪が舞っていた。