天狗山からの景色も夏色になる7月。
小樽市在住の吉田奈津子さん(30歳)からご依頼をいただく。
依頼の内容は奈津子さんが5歳から10歳までの5年間、とても優しかった継父、佐藤次郎さんを探してほしいとの所在調査(人探し)であった。
奈津子さんの両親は奈津子さんが1歳のときに離婚された。
そのため、奈津子さんは実父の顔を覚えていない。
それから4年後、母 良子さんが再婚された。
そして継父となった次郎さんは、とても奈津子さんに優しかった。
いつも近所の公園に連れて行ってくれ、夜はたくさん本を読んでくれた。
だが5年後、母 良子さんと継父 次郎さんは離婚をしたのだった。
次郎さんがいなくなってから、奈津子さんは何日も泣いたことを今でも覚えている。
それから20年がたった。
5年前、母 良子さんは病気で亡くなってしまう。
姉妹も親戚もいない奈津子さんは、日々、孤独感を感じながら生きてきた。
そんな奈津子さんも結婚をすることになった。
相手は3歳年上の職場の同僚。
今年9月、結婚式をおこなうことになった。
奈津子さんは、いつも次郎さんに会いたいという気持ちがあった。
だが、次郎さんも母と離婚後、新しい家庭があるかもしれない。
私が連絡を取って迷惑をかけるわけにはいかないと思っていた。
だが、結婚が決まり、私のウエディングドレス姿をお義父さんに見てもらいたいという気持ちがこみあげてきた。
迷惑をかけるようだったら、あきらめようと思い、それからは必至に次郎さんのことを探した。
だが、まったく手掛かりがつかめない。
役所にも相談に行ったが、養子縁組が解消されているため、次郎さんの戸籍などは確認ができなかった。
そして、当社へご依頼となったのだった。
奈津子さんの希望は、結婚式がある9月までに探してほしいとのこと。
また、次郎さんに新しい家庭があるのであれば、知られずに調査を終了してほしいとのことだった。
さっそく探偵が調査を開始する。
1ヵ月後、佐藤次郎さんの居所が判明した。
次郎さんは札幌市に住んでおられた。
良子さんと離婚後は、再婚せずに独りで暮らされていたのだった。
探偵は次郎さんの家を訪ねた。
そして調査のいきさつをお話した。
次郎さんは、探偵の話を涙を流しながら聞いてくれた。
そして、何度も何度も「ありがとう、ありがとう、僕を探してくれてありがとう」と言ってくれた。
佐藤さんの家のタンスの上に奈津子さんが公園で遊んでいる写真が飾ってあった。
次郎さんはさらに探偵に言われた。
「奈津子のことは一日も忘れたことはないのです」
「奈津子の母とは離婚となりましたが、奈津子と暮らしていた5年間は私の宝物のような時間だったのです」
「僕は奈津子と再会できるのですか」
「本当に生きていてよかった、頑張ってきてよかった」・・・・と。
1ヵ月後、次郎さんは奈津子さんの父親として結婚式に出席さてたのだった。