納沙布岬に春風が吹く4月。
根室在住の鈴木絵美さん(36歳)から夫 勇也さん(40歳)の家出人・失踪人調査を依頼される。
勇也さんは根室市で小さな水産加工の会社を経営している。
コロナ禍の影響で業績は落ち、コロナ融資の猶予期間も終わり、返済も始まっていた。
会社は勇也さんを含めて6人。
絵美さんも事務員として働いていた。
月末の支払いが迫り、勇也さんも悩んでいた。
24日、勇也さんは地元銀行に融資の相談に行くと出かけた。
その日、勇也さんは会社にも自宅にも戻らなかった。
午後9時、LINEで絵美さんに勇也さんから連絡が来る。
「もう疲れた、迷惑をかけてすまない」とだけの言葉だった。
すぐに絵美さんが返信するが、その後はLINEもメールも電話もつながらない。
絵美さんはすぐに警察に行き、捜索願を出した。
翌日は親戚、会社の従業員など皆で探し歩いた。
だが、勇也さんも勇也さんのクルマも発見できない。
28日、絵美さんが当社へ勇也さんの家出人・失踪人調査を依頼される。
さっそく探偵が調査を開始する。
当面は勇也さんのクルマを発見することに重点を置く。
調査は2班に分かれておこなう。
A班は稚内から留萌までの沿岸沿いを徹底的に探索する。
B班は稚内から網走までの沿岸沿いを探索する。
3日間を要して探したがA班、B班ともに有力な情報が得られなかった。
4日目からは調査体制を変更し、A班は旭川市内および近郊を探索、B班は札幌市内の探索に入る。
さらに3日後、B班が深夜2時、札幌市内の24時間営業のスーパー駐車場で勇也さんのクルマを発見する。
車内に人影が確認されたが、勇也さんとは断定できない。
そのままB班の調査員は勇也さんのクルマの監視を続ける。
B班からの連絡を受けた探偵は絵美さんに電話をする。
勇也さんを保護する際、どうしても身内の方の協力が必要のため、絵美さんに札幌へ来てもらうようにお願いした。
午前7時、勇也さんのクルマから人が降り、スーパー店内に入っていく。
トイレに入った際、調査員がその人物が勇也さんであることを確信する。
勇也さんは再び店内を出て、クルマに戻る。
その後、勇也さんはクルマを走行させる。
調査員も慎重に勇也さんのクルマを追尾。
勇也さんのクルマは大きな公園の駐車場に入り、再び停車する。
まもなく絵美さんが探偵と合流、その公園に向かう。
公園の出口を探偵車両2台でふさぎ、絵美さんが勇也さんのクルマに近づき、運転席の窓を小さく叩く。
勇也さんの驚いた声が離れている探偵にも聞こえる。
そして勇也さんの「すまない」「申し訳ない」「本当にごめん」など絵美さんに謝罪する声が聞こえてきた。
その後、勇也さんは絵美さんと一緒に稚内へと帰っていかれた。
その後、勇也さんの会社は民事再生手続きをおこなった。