札幌の短い夏が終わる10月。
当探偵事務所へ高田由美さん(42歳)から夫 省吾さん(45歳)の家出・失踪調査を依頼される。
省吾さんの仕事は会社員、システムエンジニアで管理職をしている。
由美さんは団体職員として働かれている。
一人娘の麻衣さん(19歳)は進学のため、東京に行っている。
省吾さんは2年前に部長職になってから、部下の管理で悩んでいた。
また、2020年の新型コロナの流行により、テレワークの構築、業績低下などでも責任がのしかかっていたようだ。
1年前より夜、眠れないなどから心療内科に通院をしていた。
表面上は元気を取り戻した省吾さんであった。
だが、15日前に置手紙を残し、家を出た。
手紙の内容は「今までありがとう」「僕はもう疲れてしまった」「いつか君の元に帰るつもりだ」「今は捜さないでほしい」と。
省吾さんは真面目で、融通が利かない性格。
会社の業務変更、コロナ禍での悩み、業績不振などすべてを抱え込んでしまったようだった。
由美さんは失踪後5日目、当社へ依頼された。
探偵は由美さんと調査方法を協議させていただいた。
1.省吾さんがクルマに乗って失踪していること。
2.省吾さんはクルマの運転があまり得意ではない、よって長距離の移動はないだろうと推測できる。
3.所持金は通帳から30万円ほどおろしている。
上記を踏まえ、探偵は札幌市内のローラー捜索の計画を立てた。
方法としては、午後9時~深夜4時まで、24時間スーパーの駐車場、パチンコ店駐車場、カラオケボックスの駐車場、
ゲームセンターの駐車場、スーパー銭湯などの駐車場など、まずは省吾さんのクルマを徹底的に捜す。
調査開始から6日目、省吾さんのクルマを24時間営業のスーパー駐車場にて発見する。
時間は深夜2時、探偵が省吾さんのクルマに近づき、確認すると省吾さんは車内で眠っているようだった。
すぐに探偵は由美さんに連絡を取り、由美さんに発見した駐車場に来てもらう。
由美さんが省吾さんのクルマに行き、本人を説得することにした。
その前に探偵車両が3台、静かに移動して省吾さんのクルマが逃走しないように囲いこむ。
準備が整い、由美さんが省吾さんのクルマに行き、クルマの窓を小さくたたいた。
省吾さんはクルマを降り、深いため息をついたあと、「すまなかった」とつぶやいたそうだ。