雪解けが進む3月。
札幌市在住の小林初枝さん(73歳)から依頼をいただく。
内容は、53年前、初枝さんが20歳の頃、交際をしていた田中春雄さん(75歳)の所在調査であった。
当時、初枝さんは北区にある大学前の食堂で働いていた。
春雄さんは、医大生。
いつも食事に来る春雄さんから映画に誘われ、それがきっかけで交際が始まった。
春雄さんの父は札幌で開業医をされていた。
初枝さんと春雄さんは交際2年が経ち、春雄さんは「卒業し、臨床研修が終わったら結婚しよう」とプロポーズをされた。
家柄が違いすぎるから無理だとは思いながら、春雄さんが大好きだった初枝さんは、「はい」と答えた。
そのときの嬉しさは、昨日のことのように覚えておられるそうです。
だが、春雄さんが初枝さんと交際していることを知った春雄さんの父が激怒した。
初枝さんのところにお金を持ってきて「これで春雄と縁を切ってくれ」と迫られた。
とても悲しかったが、春雄さんが父の病院を継ぐことになることを知っていた初枝さんは、お金は受け取らず、「分かりました」と答えたそうです。
3日後、初枝さんは親戚を頼って東京へと引越をした。
初枝さんは、春雄さんのことを忘れようと必死に働かれた。
やはり食堂で働き、35歳のとき、札幌に戻ってきて、白石区で食堂を開店した。
それから38年、食堂を営んでいた。
だが、2年前にひざの手術をしたため、今年、店を閉店された。
初枝さんはいくつも縁談の話があったが、店が忙しい、そして未だ忘れられない春雄さんのこともあり、生涯独身で過ごされた。
初枝さんの両親は他界、姉妹もいない。
人生の最後の思い出として、春雄さんのことが知りたい・・・そんな気持ちが日増しに強くなっていった。
そして、知人の紹介で当社を訪れ、依頼をされたのだった。
初枝さんは、探偵に言われた。
「春雄さんの家族に波風を立てたくはありません、この手紙をそっと春雄さん渡してください」・・・と。
さっそく探偵が調査を開始する。
情報は、春雄さんの父が開業医だったこと。
また、初枝さんが春雄さんの生年月日を正確に覚えておられたこと。
調査を進めても、春雄さんのお父さんが開業している病院の情報が出てこない。
春雄さんがお父さんの病院を継いでいるなら、何らかの情報が出てくるはずであった。
その後、田中春雄さんの情報が出てきた。
利尻島に住んでいることが分かった。
すぐに探偵は利尻島へ飛んだ。
探偵は事前の調査で春雄さんが独り暮らしであることを確認していた。
そして探偵が春雄さんを訪ね、事情を話し、初枝さんの手紙を渡した。
春雄さんは、驚きながら初枝さんの手紙を読まれていた。
しだいに春雄さんの目からたくさんの涙があふれていた。
そして一言、探偵に言われた。
「初枝さんに会いたい、すぐに会いたい」・・・と。
春雄さんが探偵にこれまでの状況を話してくださった。
勝手に初枝さんのところに行き、初枝さんがいなくなることを迫った父と春雄さんは喧嘩をした。
春雄さんの父への初めての反抗だったそうです。
その後、春雄さんは父と疎遠になり、父の病院を継がなかった。
公立病院で勤務医として働き、65歳の定年を機に利尻島の特別養護老人ホームで嘱託医として働いておられる。
春雄さんも生涯独身であった。
春雄さんも日々の仕事に追われ、そして初枝さんのことが忘れられなかったそうです。
また、春雄さんも49年前、初枝さんの所在調査を探偵に依頼されたそうです。
だが、当時は初枝さんの所在が判明せず、初枝さんが結婚して「氏」が変わっているため分からないとの報告だった。
そのころ、初枝さんは東京にいたため、当時の探偵は見つけられなかったのだろう。
春雄さんは、探偵に「明日と明後日、仕事は休みです、これから札幌へ向かいます」と。
探偵は「分かりました、最終の17:30のフェリーに乗りましょう」と提案する。
時間がない、春雄さんもほとんど着の身着のままで探偵の車に乗り、フェリー乗り場に行き、乗船する。
19:10 フェリーが稚内に到着する。
稚内から札幌へと向かう。
移動中、初枝さんに状況は伝えていた。
札幌に到着したのは、深夜1:00。
初枝さんの家の前に探偵の車が到着すると、1分と経たずに初枝さんが玄関から飛び出てくる。
51年ぶりの再会であった。
探偵は春雄さんを車から降ろし、岐路についた。
3日後、二人から連絡をいただく。
初枝さんが利尻島へ引っ越すことになったとのこと。
51年後の結婚、おめでとうございます。
