Case study調査事例

所在調査(人探し)  

17年間、会っていない娘にこの通帳を渡したい・・・

下記調査事例は複数の調査をもとに創作したフィクションです。

五稜郭タワー展望台からの眺めも春が感じられる4月。

伊藤俊明さん(52歳)から22年前に別れた娘 彩さん(25歳)の所在調査を確認し、通帳を渡してほしいとの依頼であった。

俊明さんの仕事は運送業でトラックの運転手をされている。

22年前、妻 由香里さんと離婚をされ、彩さんは由香里さんが親権者となった。

由香里さんは俊明さんと結婚する前に佐々木健司さんという方と男性と交際をしていたが、縁がなく別れた。

その後、由香里さんは俊明さんと知り合い、結婚に至った。

彩さんも生まれ、穏やかな日々が続いていた。

だが、3年後、突然、由香里さんから離婚を迫られた。

由香里さんは全てを正直に話してきたそうです。

「私はアナタと交際する前に佐々木健司さんと交際していました」

「健司さんとは縁がなく別れてしまいましたが、半年前に再会しました」

「私はどうしても健司さんへの愛を捨てられません」

「だから、離婚してください」・・・・・あまりにも身勝手なものだった。

だが、俊明さんは、由香里さんの離婚要求に承諾した。

夫婦仲が悪くなり、彩さんが辛い思いをするより離婚を受け入れたのだった。
 
 

さらに由香里さんの要求は身勝手なものだった。

「養育費はいりません」

「彩が成人するまでは、会うことは遠慮してください」 

だが、それも俊明さんは受け入れた。

俊明さんはあと17年間我慢すれば、彩が成人すれば会える・・・・と考えた。

そして離婚後が成立する。

翌年に由香里さんと健司さんは結婚をする。
 
 
俊明さんの元に1年に一度、由香里さんの母 敏子さんから彩さんの写真が数枚送られてくる。

この写真を見ては、彩さんの成長を確かめていた。

俊明さんは離婚後、人生の目標を失ってしまったと思ったそうです。

だが、由香里さんと彩さんが家を出ていった後、家の中を整理をしていると、引き出しから彩さんの名前の通帳が出てきたそうです。

その通帳を見た俊明さんは、これからの人生、彩の通帳に積み立てることを目標とした。

毎月5万円、給料日の25日に彩さんの通帳に積み立てをしていった。

17年後、突然、由香里さんから手紙が届く。

「彩も成人になりました」

「彩は今の夫を本当の父親だと思っています」

「アナタとの約束で成人をむかえた彩に会わせると約束をしていましたが、彩のために我慢してください」・・・また身勝手な内容であった。

だが、俊明さんはそれも受け入れた。

彩が父親が本当の親ではなかったのを知るのは辛いだろう・・・と判断したのだった。

その後も敏子さんから彩さんの写真が届く。

成人式での彩さんの写真を見た時、俊明さんは涙がとまらなかったそうです。

更に5年後、敏子さんから1通の手紙が届いた。

「彩が結婚することになりました」・・・・と。

俊明さんは嬉しかった。

あの彩が結婚する・・・・

いつ死んでもよいと思ってきたが、生きていてよかった・・・・と。

だが、俊明さんは一つのことに気づいた。

毎月、積み立てをしていた彩の通帳を本人に渡したい。

だが、家族に波風を立てることも避けたい。

そこで当社へ依頼となったのだった。
 
 
探偵は俊明さんと様々な打ち合わせをおこなった。

彩さんの住所については、実父である俊明さんは戸籍の取得をすることで判明する。

その後、探偵は彩さんに通帳をどう渡すのか?を検討した。

だが、どうしても俊明さんの存在を隠して通帳を渡すのには無理が生じる。

いずれにしても、まずは彩さんに接触することになった。

彩さんは会社員として働いていた。

まずは探偵が彩さんと接触することを試みた。

土曜日、彩さんは仕事は休み、探偵が彩さんの独り暮らしのマンションを訪ねる。

探偵はなるべく俊明さんの存在を伏せながら、通帳の件を話をした。

だが、通帳には1300万円の金額が入っている。

彩さんはたくさんの疑問を探偵に聞いてくる。

「この伊藤彩とは誰ですか?」

「私は木下彩(由香里さんの再婚で氏が変わっている)です」

「いったいどういうことですか?」

探偵もやはり俊明さんの存在をお話することになる。

彩さんはじっと探偵の話を聞いてくれていた。

そしてポツンと「その方と会わせてください」ときっぱりと言われた。

探偵が彩さんといろいろな話をさせていただくが、彩さんが俊明さんと会いたいという意思は変わらなかった。

探偵はすぐに俊明さんに連絡を取る。

当初、俊明さんは困惑していたが、探偵の説得で彩さんと会うことを了承してくれた。

翌日の日曜日、探偵と俊明さんは彩さんのマンションを訪ねる。

彩さんは緊張された顔で出迎えてくれました。

俊明さんが「初めまして」と言うと、彩さんは「初めましてではないですよね」と答える。

俊明さんは思わず「そうです」と言った。

当初、互いにぎこちない会話をしていたが、少しづつ彩さんが話し始めた。

彩さん    「遊園地に連れてってくれましたよね」

俊明さん   「ウン・・・・」

彩さん    「公園によく連れてってくれていましたよね」

俊明さん   「ウン・・・・・」

彩さん    「海に連れてってくれましたよね」

俊明さん   「ウン・・・・・」

昨日、彩さんは実家に行き、そっとアルバムを見ていた。

由香里さんと彩さんが写っている写真が不自然に切り取られていたらしい。

切り取られた部分は俊明さんが写っていたのだろう。

彩さんはそんな写真を見ながら、少しづつ俊明さんのことを思い出してきたそうです。

そして彩さんは俊明さんにキッパリと言われました。

「いっぺんに全部をいただくことは絶対にできません」

「結婚式のお祝いとして10万円を下さい」

「そして、、毎月2万円ずつください」

「長生きして私に毎月のお小遣いをください」

「そうでなければ、1円のお金も受け取れません」・・・・と。

彩さんは最後の条件として「私の結婚式に出てください」というものだった。

俊明さんは彩さんの言葉を聞きながら大粒の涙を流していた。

帰り道、探偵に俊明さんは言いました。

俊明さん  「俺・・嬉しいよ」

      「生きていた良かった、嬉しいよ」

      「俺、いつ死んでもいいと思って生きてきた」

      「でも、これからは毎月、N子にこづかいを送らなければならない」

  「長生きしなければならない」

  「俺、タバコ・・・やめるわ」

 
 

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